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製造・物流・流通業、そしてサプライチェーンに関わる人同士の、出会いと交流の場を提供したい――。GEMBA編集部はこうした思いから、トークイベント「GEMBA Talk」を企画しました。その幕開けとして2019年9月25日、「GEMBA Talk ものづくりからしくみづくりへ 中小製造業に学ぶBtoBビジネス」を開催。当日の様子をレポートします。

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編集部主催のトークイベント「GEMBA Talk」が開幕!

記念すべき初回の「GEMBA Talk」は、製造業の3名の経営者をゲストとして招き、日本の製造現場における課題や未来について参加者の方々とともに考えました。

イベントは2部構成。前半はプレゼンテーション形式で、ゲストがこれまで取り組んできた事業や自社のサービスについて紹介。後半はトークセッション形式で、編集部が用意した3つのテーマについて各自の考えを自由に語ってもらいました。

イベント冒頭で、GEMBA編集部の和田昌子(パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社(以降CNS社))が、このイベントにかける思いを話します。

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GEMBA編集部の和田昌子(パナソニック株式会社 CNS社)
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GEMBA編集部の和田昌子(パナソニック株式会社 CNS社)
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「松下電器の創業から101年、パナソニックは製造メーカーとして、ものづくりの部品調達・商品の生産・販売を通じて、また、B2Bのお客様へのソリューションの提供というかたちでサプライチェーン業界に広く、深く関わってきました。人口減少、物流崩壊、働き方改革、担い手不足など、 いま“日本のものづくりの現場”で深刻化するさまざまな課題の解決に、パナソニックがこれまで培ってきた技術とノウハウで何かお役に立てないかと思っています。このGEMBA Talkを通じて、製造業をはじめとしたサプライチェーンに関わるさまざまな方と繋がり、活発な議論を行うことで、業界全体で “ものづくり大国日本”といわれていた日本の強みを取り戻すための何らかのきっかけになればと考えています。今日はどんなお話が聞けるのか、本当に楽しみです」(和田)

ものづくりビジネスの変革を成し遂げた3名の経営者たち

最初に登壇したゲストは月井精密株式会社代表取締役の名取磨一氏。月井精密は名取氏の祖父が1981年に創業した金属加工会社で、2004年にその祖父が突然、脳梗塞で倒れたために、名取氏は20歳という若さで会社を継ぎました。

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株式会社NVT/月井精密株式会社 代表取締役 名取磨一氏
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株式会社NVT/月井精密株式会社 代表取締役 名取磨一氏
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「現在は、国内3工場、海外1工場をもち、人工衛星やロケットの部品などを手がけています。NC化(数値制御化)によって技術が標準化されたことで社員も若返り、最年長は工場長の34歳、大半が20代で、うち半数は女性です」(名取氏)

さらに一方で、名取氏は2015年にITベンチャーの株式会社NVTを立ち上げ、見積業務から請求業務までを超効率化するクラウドシステム「TerminalQ」(ターミナルキュー)を提供しています。これは、発注者が製品図面をシステムにアップすると、AIがその図面の形状、材質、大きさなどを分析して、最適な加工会社を瞬時にリストアップしてくれるというものです。発注側は短時間で見積もり依頼をする会社を見つけられ、受注側は自社の得意分野を請け負えるという、双方にとってメリットが大きいサービスです。

「現在、加盟業者は約1500社。1日2000枚ほど図面のやりとりが発生し、合計すると数億~数十億円規模の案件が動いている」と名取氏。

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提供:株式会社NVT 「TerminalQ」のサービス概要
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提供:株式会社NVT 「TerminalQ」のサービス概要
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続いて登場したのは、株式会社浜野製作所代表取締役の浜野慶一氏です。同社は1967年、浜野氏の父が東京都墨田区で創業。1993年にその父が亡くなったことで浜野氏が跡を継ぎました。父が亡くなった2年後に母が亡くなり、その4年後の2000年に近隣火災のもらい火により自宅兼工場が全焼し、経営も危機的な状態に。「倒産は明日か、明後日か……」という悲惨な状況だったそうです。

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	株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野慶一氏
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株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野慶一氏
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しかし、多くの方々に背中を押してもらい、浜野氏は経営を立て直します。以来、「お客様・スタッフ・地域」への感謝を忘れずに、「利益を還元すること」を経営理念として邁進。その後、設計・開発の領域に業務を広げ、早稲田大学と共同開発した1人乗り電気自動車「HOKUSAI」、海洋研究開発機構などと協力した深海探査艇「江戸っ子1号」の開発プロジェクトなど新しいことに挑戦していきました。

こうした産学官連携のほかにも、墨田区内の企業と連携して廃材を活用する「配財プロジェクト」、キッザニアと連携した職人体験教室「アウト オブ キッザニアinすみだ」などの地域連携にも挑戦。さらに現在は、羽を用いない次世代型風力発電機の研究に取り組む「株式会社チャレナジー」や、次世代車椅子の開発を進める「WHILL株式会社(ウィル)」など、スタートアップの支援にも力を入れています。

「いまや取引企業は4800社にものぼる」と浜野氏。

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提供:株式会社浜野製作所
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提供:株式会社浜野製作所
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最後に「Facebookの友だち申請大歓迎です」と言いながら登壇したのは、旭鉄工株式会社代表取締役の木村哲也氏。

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i Smart Technologies株式会社/旭鉄工株式会社 代表取締役 木村哲也氏
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i Smart Technologies株式会社/旭鉄工株式会社 代表取締役 木村哲也氏
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「私は以前、トヨタ自動車に20年ほど勤務経験があり、いわゆる“トヨタ生産方式”を学びました。2013年に現在の会社に移り、そのノウハウを生かして業務改善に着手、IoTによるデータ解析を導入しました。具体的には、『生産時間』、『製造ラインの停止時間』、『サイクルタイム(製品1個を作る時間)』という3つのデータを測定して見える化し、徹底的に改善を繰り返すという手法です」(木村氏)

旭鉄工の工場には約250の製造ラインがあり、モニタリングしているのは150ライン。そのうちの100ラインで平均43%もの生産性向上を実現したそうです。つまり、1日に1000個しか製造できなかったラインが、1430個製造できるようになったというレベルの業務改善を意味します。

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提供:i Smart Technologies株式会社
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提供:i Smart Technologies株式会社
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「このIoTの業務改善ツールを他の企業にも提供したいと思い、i Smart Technologies(iSTC)という会社を立ち上げました。現在、SaaS(Software as a Service:クラウドでソフトウェアを提供)で展開しており、『導入が容易』『格安』『改善実績が豊富』という3点が好評で、200社以上に導入していただいています」(木村氏)

自社の作業効率を劇的に改善し、その成果をもとに他社に展開している。その強い説得力に、参加者も納得していた様子でした。

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グラフィックレコーディング
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今回のイベントの内容は、グラフィックレコーディング(議論の流れを視覚化し、参加者へ共有する手法)によってリアルタイムに記録されていきました
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『ものづくりの力』はこれからの社会にどう活きるのか?

これからいよいよ本イベントの目玉といえる、後半のトークセッションに入ります。司会はGEMBA編集部の廣瀬遥(パナソニック株式会社 CNS社)です。トークセッションの最初のテーマは、「『ものづくりの力』はこれからの社会にどう活きるのか?」。ゲストは次のように解答しました。

「弊社はこれまでさまざまなスタートアップを支援してきました。すべてのスタートアップに共通しているのは、“開発した製品や技術で社会課題を解決したい”という弊社と同じ強い想いです」(浜野氏)

「社会課題を解決する価値をつくり出すのは、簡単ではありませんが、製造業の仲間で協力してクリアしていきたい。大切なのは会社同士の共創、共生。弊社ではそのために製造業のマッチングイベントも開催しています」(名取氏)

続いて2つ目のトークセッションのテーマは、「あたらしい価値をつくる人を増やす方法とは?」。ゲストの人材育成論について語ってもらいました。

「多種多様な価値観を持つ人が集まること、自分の頭で考えられる人を育てる環境をつくることが大切だと思います。そのため、浜野製作所では大学の単位制のような仕組みを導入しようとしていて、自分の専門分野は必須科目として、それ以外にも興味を持ったことを学べるように勉強会を開催したり、社会科見学のような異業種の勉強会も設けていきたいと考えています」(浜野氏)

「社員に本来の業務とはまったく異なることに挑戦してもらっています。結局、新しいアイデアは、既存のもの同士の新しい組み合わせからしか生まれません。新しい価値をつくるには、未体験のものに数多く触れることが大切だと思います」(木村氏)

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GEMBA編集部 廣瀬遥(パナソニック株式会社 CNS社)
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GEMBA編集部 廣瀬遥(パナソニック株式会社 CNS社)
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そして最後のテーマは、「『競争』と『共創』をどうわける?」。ゲストの考える業界の展望や経営の哲学について語ってもらいました。

「どんな機械を使って、どういう手順で加工を行えばもっとも効率よく製品ができるのかというデータが蓄積されれば、業者間のベストな連携方法が見えてくると思います」(名取氏)

「私は競争したくないので、得意分野に経営資源を集中して競合を避けることにしています。弊社は3つの武器を持っています。もしそれぞれの分野で上位10%になることができれば、10%×3分野で、世の中に『0.1%』の希少な会社になることができます。つまり、競合のいない存在になれるのです」(木村氏)

質疑応答では、参加者から「10年後も生き残るために、ものづくりの会社に必要なものは何ですか?」という質問がありました。それに対し、ゲストはこう答えました。

「やはり、AI、IoT、ロボティクスの3つが必要。人の手でやるには限界があるし、省力化は必須になると思います」(名取氏)

「チャレンジできる会社。いろんなチャレンジをしたもの勝ち」(木村氏)

「時代を経ても、“人の気持ちに寄り添う”ということは、普遍の価値をもつものだと考えています。東京の下町の町工場で育まれた“人情”もそういうものかもしれません。人にしか出来ないことこそ、価値が生まれるのだと思います」(浜野氏)

テーマごとの三者三様の答えに、参加者もさまざまな考えを巡らせているようでした。

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『ものづくりの力』はこれからの社会にどう活きるのか?
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ここでトークセッションは終了。参加者と登壇者の全員で記念撮影のあと、立食形式でのネットワーキングタイムが始まり、参加者同士の交流が行われました。交流会ではお酒の提供もあり、3氏を囲みながら終始和やかな雰囲気でした。こうしてGEMBA Talkは幕を閉じました。今後も、サプライチェーンにまつわるテーマでGEMBA Talkを企画していくので、ぜひご参加ください!

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登壇者3名とイベント参加者
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GEMBA編集部では、サプライチェーンに関わる人同士の出会いと交流の場を提供したいという思いから、トークイベント「GEMBA Talk」を開催しました。今回のテーマは「ものづくりからしくみづくりへ 中小製造業に学ぶBtoBビジネス」。当日の様子をレポートしました。
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【イベントレポート】GEMBA Talk 〜ものづくりからしくみづくりへ 中小製造業に学ぶBtoBビジネス〜
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【イベントレポート】GEMBA Talk 〜ものづくりからしくみづくりへ 中小製造業に学ぶBtoBビジネス〜
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取材・文:相澤良晃、写真:佐坂和也