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「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」をパーパスに掲げ、日々それぞれの現場を探求するパナソニック コネクトのリーダーたちが原体験や行動原理を語る「現場の探求者たち」。今回は、パナソニック コネクトの100%子会社であり、AIを中心にサプライチェーン向けにさまざまなソリューションを提供するBlue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴのインタビューをお届けします。

彼が語った「サステナブル・アバンダンス」という言葉には、人類に豊かさをもたらすサプライチェーンに対する期待が込められていました。1270億円(約8億3900万ドル)を投じた、米One Network Enterprises(以下、One Network)の買収を発表するために来日していたアンゴーヴに、AI×ネットワークで実現する、サプライチェーンの未来、そして自身の夢を語っていただきました。

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ConnectAIによる要約
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  1. ダンカン・アンゴーヴCEOのビジョン:「サステナブル・アバンダンス」、つまり「持続可能な豊かさ」をAIとネットワーク技術を駆使し、サプライチェーンの最適化を通じて実現したい。
  2. One Networkの買収の意義:リアルタイムデータ共有とAI可視化技術で、安定したサプライチェーンネットワークを構築する。
  3. 持続可能で豊かな未来へ:サプライチェーン改革によって、CO2削減などにも貢献し、豊かなだけでなく持続可能な世界の実現を目指す。
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Duncan Angove(ダンカン・アンゴーヴ)

Blue Yonder, Inc. CEO

パナソニック コネクト株式会社 執行役員 シニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント

英国出身。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で経済学学士号を取得。Infor、Oracle、Retekで幹部職を歴任。Infor社ではプレジデントとして、同社を業界初のクラウド企業へと成長させ、6000万社以上のサブスクリプションユーザーを獲得。2022年7月より、Blue Yonder 最高経営責任者(CEO)に就任。同年10月より、パナソニック コネクトのシニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント(上席副社長)に就任。

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AI×ネットワークで、安定したサプライチェーンを当たり前のものに

――まずは、Blue Yonderのビジョンについてお聞かせください。

アンゴーヴ:私たちBlue Yonderは、サステナブル・アバンダンス(Sustainable Abundance)を目標に活動しています。「Abundance」は、「豊かさ」「裕福さ」という意味です。人類史において、サプライチェーンは、様々な面で人々の生活を「豊か」にしてきました。たとえば、サプライチェーンのグローバル化によって、貿易も活発になり、貧困のなかにあった何億、いや何十億人の人たちの生活水準が向上したのではないでしょうか。

サプライチェーンの進化は、各時代の発明によってもたらされてきました。貨幣をはじめとして、コンテナや蒸気機関車、広義にはインターネットもその中に含まれるでしょう。私たちは今、「AI」と「ネットワーク」という発明を掛け合わせることで、サプライチェーンのさらなる進化を促したいと思っています。現代は技術の進化によって、衣料品、医薬品、あるいは自動車や電化製品などが、昔よりも格段に安価で手に入る豊かな社会になりました。サプライチェーンの領域でも、そうした豊かさを生むようなイノベーションを起こすことが大きな目標です。

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Blue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴ
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Blue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴ
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――なぜ、今サプライチェーンに注力するのか、改めて教えてください。

アンゴーヴ:近年、パンデミックや地政学的な変化、急激な気候変動など、世界中で“壊滅的”な出来事が相次いで起こっていますよね。そうした状況にあって、サプライチェーンの安定性、透明性を担保したいというニーズはとても高まっています。

――これまで、Blue Yonderではどのようにサプライチェーンの課題と向き合ってきたのでしょうか?

アンゴーヴ:サプライチェーンの課題は、簡単に解決できるわけではありません。例えば、1台の自動車を作るための部品は平均3万個に上ります。自動車のサプライヤーが数社あり、それらの企業にそれぞれ数百のサプライヤーがいて、さらにその先にもサプライヤーがいる。そして、輸送業者、トラック、航空機や船などが材料を拠点に送り、車ができたらディーラーの方に輸送し、コンシューマーに届けるということで、不確実なだけでなく、さまざまなレイヤーの企業が関わっているため、各工程の流れが複雑化しているのです。

だからこそ、Blue Yonderはサプライチェーンソフトウェアの会社として、End to Endのソリューションにこだわってきました。予測、供給計画、倉庫管理、輸送管理、発注管理など、サプライチェーンの各ノードで共通のプラットフォームを提供することで、相互の連携を深め、よりそれぞれの現場で高いパフォーマンスを引き出すことができます。

そして、もう一つのBlue Yonderの特徴は、その全てが、AIによって支援されていること。Blue YonderのAIは、毎日100億件の予測を実行しているのです。また、昨年だけで60件のAI関連の特許申請をしています。もちろん、これらのAIは、サプライチェーンのノードの役割に応じて最適化したものです。

最新の自動車は、エアコンが快適な室温に自動調節してくれますし、雨が降ってくればワイパーが動き出して、日が沈めばライトがつきますよね。こうした自律的な制御を、SCMでも行うことが目標です。たとえば、仮に小売で商品の欠品が発生しそうな場合、AIがあらかじめ予測して自動的に追加注文の手配を行う。いつもの仕入先に余剰在庫がない場合は、ネットワークのデータを参照して、余剰在庫のある仕入先から取り寄せる。さらにトラックの位置情報などのデータも組み合わせることで、より効率的な配送ルートで追加注文の商品が小売に届けられるようになる。今回、One Networkと融合することでそんなオートノマス(自律的な)サプライチェーンの世界の実現に大きく近づいたと思います。

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One Network買収会見の様子
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2024年3月29日にOne Network買収を、パナソニックコネクトCEOの樋口泰行らとともに記者会見にて発表。樋口は、今回の買収について「今までの投資とは異なる、圧倒的なゲームチェンジャーになる」と話した。
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まるでFacebookのように、誰もが参加できるサプライチェーンネットワークを

――One Networkが持つどんな力が、どのようにオートノマスサプライチェーン実現に寄与するのでしょうか?

アンゴーヴ:AIとネットワークです。サプライチェーンの安定性の向上には、企業間の連携が欠かせません。いま、サプライチェーンにおいて何らかの不具合が生じた場合、それが判明するまでに4~5日、さらに解決までには2週間程度かかるという報告があります。しかし、サプライチェーンに連なるすべての企業のデータをリアルタイムで共有していれば、瞬時に不具合を検知して対応することも可能です。

そして、One Networkは、顧客企業と「直接取引するサプライヤー」はもちろん、「間接的に取引する2次以下のサプライヤー」の企業間取引データを、リアルタイムでつなぐ技術を有しています。現在、このサプライチェーンネットワークには約15万の企業のほか、鉄道やトラックなどの運送会社約2万社が参加しています。加えて、One Networkが保有するAIは、企業間をまたぐ膨大なデータの可視化を得意としています。

つまり、複数企業間のサプライチェーンビジネスネットワークですね。サプライヤーや運送会社がBlue Yonderのプラットフォームに加われば、サプライチェーンに関わるすべての人たちがネットワークを介して取引を始めることができます。

これまで複雑で多層だったサプライチェーンを可視化できますし、サプライヤーや運送会社がよりコラボレーションしやすくなる。非常に明確な付加価値です。

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Blue YonderとOne Networkの融合がもたらす価値
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Blue YonderとOne Networkの融合がもたらす価値(記者会見時に使用スライドより引用)
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――両社が強みを掛け合わせることには、高いシナジーがあると期待されているのですね。

アンゴーヴ:はい。「提供価値」「技術的な強み」「顧客基盤」のいずれの観点でも協業のメリットは大きく、買収案件によくあるような「コスト削減」ではなく、「売上の増加」につながるシナジーが生まれます。Blue Yonderの需要予測AIにOne Networkのリアルタイムの取引情報が加われば、さらにAIの分析や予測の精度があがります。より多くのお客様が利用したくなる、魅力的なソリューションに進化することは間違いありません。

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Blue YonderがOne Networkと生み出すシナジー
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Blue YonderがOne Networkと生み出すシナジー(記者会見時に使用スライドより引用)
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また、サプライチェーンネットワークへの参加は、Facebookの利用と同じくらい簡単で、今後も参加企業は増え続けていくでしょう。参加各社からは、ネットワークフィーをいただいているため、安定した収益も期待できます。

実はOne Networkの創業者は、Blue Yonderが以前買収した企業に所属していたこともあり、両社の技術は親和性が高く、ソリューション同士を繋ぐのはそれほど難しいことではありません。すでに両社のソリューションを利用しているお客様もいて、どのような統合が求められているのかもわかっています。

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より豊かで持続可能な世界という夢に向かって

――パナソニック コネクトは「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」というパーパスを掲げています。サプライチェーンの現場からどんな未来につながっていくのか、楽しみになりました。

アンゴーヴ:「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」という意味では、これまでも私たちは、お客様のサプライチェーンにおけるお困りごとを解決する力を手に入れるために必要な企業を買収をしてきたのです。
 

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(左から)パナソニック コネクト CEO 樋口泰行、Blue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴ
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(左から)パナソニック コネクト CEO 樋口泰行、Blue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴ
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eコマースにおける返品管理システムに強みを持っている英国 Doddle社と一緒になったことで、eコマースの市場拡大にともなう返品の急増に頭を抱えている多くの企業に、貢献できるようになりました。

ドイツのflexis社は、自動車をはじめ、製造業向けサプライチェーンプランニング(SCP)テクノロジーのリーディングカンパニーで、「自分ぴったりにカスタマイズされた一点もの」を求めるユーザーに対応したいというメーカーのニーズに応えるために、買収しました。

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Blue Yonder 直近のM&Aの図表
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そして、今回のOne Networkの買収は、「不確実性の時代の管理要求」に応えるためのものです。これで、Blue Yonderのサプライチェーンソリューションにおけるミッシングパーツはほぼ無くなったと思っています。ただ、また時代が変わって、新たな課題が生まれたら、その都度、それを解決するためのソリューションの獲得を検討していくでしょう。今後も、多くのお客様にも喜んでいただけるよう力を尽くしていきますので、どうぞご期待ください。

――最後に、アンゴーヴさんが実現したい未来のビジョンを教えてください。

アンゴーヴ:昨今は豊かなだけではなく、持続可能性も求められるようになりました。サプライチェーンの最適化は、CO2を排出するトラックの輸送距離の短縮や、食品ロスの低減にもつながります。サプライチェーン改革によって、世界をより豊かで持続可能のものにする。「サステナブル・アバンダンス」という言葉にはそんな思いを込めています。それは私が長年、叶えたいと思い続けている夢なのです。
 

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アンゴーヴがつなげたい「未来」は?

「AIとネットワークの力で、世界に持続可能な豊かさを届けるサプライチェーンを実現したい」

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「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」をパーパスに掲げ、日々それぞれの現場を探求するパナソニック コネクトのリーダーたちが原体験や行動原理を語る「現場の探求者たち」。今回は、パナソニック コネクトの100%子会社であり、AIを中心にサプライチェーン向けにさまざまなソリューションを提供するBlue Yonder CEO ダンカン・アンゴーヴのインタビューをお届けします。彼が語った「サステナブル・アバンダンス」という言葉には、人類に豊かさをもたらすサプライチェーンに対する期待が込められていました。1270億円(約8億3900万ドル)を投じた、米One Network Enterprises(以下、One Network)の買収を発表するために来日していたアンゴーヴに、AI×ネットワークで実現する、サプライチェーンの未来、そして自身の夢を語っていただきました。
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Blue Yonder ダンカン・アンゴーヴCEOが明かす夢 AI×ネットワークで、人類に「豊かさ」をもたらすサプライチェーンに
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Blue Yonder ダンカン・アンゴーヴCEOが明かす夢 AI×ネットワークで、人類に「豊かさ」をもたらすサプライチェーンに
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取材・文:相澤良晃 写真:池村隆司