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事業活動の大前提である「人権の尊重」、そして企業の競争力の源泉として、DEI推進に取り組んできたパナソニック コネクトと、LGBTQ+に関する情報発信、安心・安全な居場所の提供、そして多様な人びとが協力してよりよい社会を築くことを理念に活動するプライドハウス東京。

LGBTQ+への理解を深め、アライ(理解者・支援者)を増やすことを目的に、両者が共同で立ち上げた企業連合プロジェクト「Pride Action30」は、発足した2024年度と比べて3倍以上となる65社にパートナー企業が増えるなど、さらにその輪が広がっています。(参考:Pride Action30できることから始めよう。

LGBTQ+に関するさまざまな活動のほか、企業とのコラボレーションや協働プロジェクトなどを通して、マイノリティの人びとにとって働きやすい環境づくりを推進するプライドハウス東京 代表理事の五十嵐ゆり氏と、DEIの担当役員として社内のDEI浸透に取り組んできたパナソニック コネクト CMOの山口有希子。両者が、「企業」だからこそできるDEI推進のあり方を語り合いました。

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五十嵐 ゆり

プライドハウス東京 代表理事

LGBTQ+向けのライフプランセミナーや女性限定イベントを主催してきた経験から、2012年にLGBTQ+支援団体Rainbow Soupを立ち上げ、2015年にNPO法人化し代表に就任。当事者としての経験や関連の最新情報などをベースに、SOGIE・LGBTQ+をテーマにした研修・コンサル・社外相談窓口を展開する。全国各地の企業・自治体などでの実績多数。現在はプライドハウス東京の代表理事のほか、LGBTQ+支援企業の代表も務める。

山口 有希子

パナソニック コネクト 取締役 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント CMO

パナソニック コネクトのマーケティングおよびデザイン部門の責任者として、国内外のマーケティング機能を強化。また、ダイバーシティ担当役員として女性活躍、LGBTQ+の理解促進、男性育休の100%取得なども推進。日本IBM、シスコシステムズ、ヤフージャパン(現LINEヤフー)など国内外の複数の企業にてマーケティング部門管理職を歴任。

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AI記事要約 by ConnectAI
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※ConnectAIは、パナソニック コネクトが社内で活用している生成AIサービスです。
  1. DEI推進の重要性と「Pride Action30」の発足
    パナソニック コネクトとプライドハウス東京は、LGBTQ+への理解を深めるためのプロジェクト「Pride Action30」を立ち上げ、2年目となる25年度は参加企業が65社に増加。DEI推進は企業の競争力を高める重要な要素であり、「人権の尊重」は誰しもが持つ根本的な権利として、企業活動の基盤として重視されています。

  2. 企業改革と職場環境の変革
    労働力不足が課題となる日本において、多様な人材が働ける環境を整えることが不可欠とされています。パナソニック コネクトは、DEI推進を含む企業改革を進め、女性管理職比率の向上や育休取得率の100%達成など、社内カルチャーの変革を実現しています。企業と個人の相互作用がより良い職場環境を築くための鍵となっています。

  3. 知識のアップデートと社会全体への影響
    LGBTQ+当事者を含め、誰もが安心して働ける環境を整えるためには、経営層からの積極的な意思表明が不可欠であり、無関心層へのアプローチが重要です。知識のアップデートがDEI推進の第一歩であるため、「Pride Action30」を通じて、社会全体にポジティブな影響を与えることが期待されます。

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日本が向き合うべき、社会とDEI推進の現状

パナソニック コネクトは、前身であるコネクティッドソリューションズ社(以降、CNS)の時代から、DEI推進に注力しています。まずは、その背景をお聞かせください。

山口:当社のCEOである樋口は、2017年にCNS社長に就任した当初から、3階層にわたる企業改革に着手しました。その土台となる1階「風土改革」を、私たちは「カルチャー&マインド改革」と呼んでいます。中でもDEI推進は、その「カルチャー&マインド改革」の3本柱の一つとして重視してきた取り組みです。

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パナソニック コネクトの3階層の企業改革
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パナソニック コネクトの3階層の企業改革
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私たちが目指しているのは、「強くて優しい会社」です。「強い」とは、グローバルに通用し、社会に貢献し、利益を生み出す競争力のある企業であること。そして「優しい」とは、人権を尊重し、すべての社員がイキイキと働ける企業であることです。「人」が働く企業において、誰しもが持つ根本的な権利である「人権の尊重」は、何をおいても正面から向き合わなければならないと考えています。

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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五十嵐:日本は労働力不足が課題になっていますよね。これからも日本全体が成長を続けるためには、多様な人材が働ける組織づくりは不可欠だと思います。「DEIを推進しなければ、優秀な社員の確保が困難になるとの認識はあるか」というアンケートに、60%以上の企業が「大いにある」と答えるなど(参考:国際女性デー2025 多様性尊重、人材確保の鍵 回答企業の8割認識 毎日新聞調査)、国内企業の LGBTQ+への理解は進みつつありますが、当事者の方々が「存在が認識されていない」「誰にも相談できない」と感じることもまだ少なくありません。講演や自治体での活動を通して、そうした経験から当事者の方々が離職・転職を繰り返しているという現状を耳にすることもあります。このようなことはなくさなければならないし、企業にとっても、本当であればこれから社内でもっとキャリアを積むことができる有望な20〜30代や、リーダークラスになり得る40代の人材を失うのはもったいないことだと思います。

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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プライドハウス東京 代表理事 五十嵐ゆり氏
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一方で、トランプ大統領就任以降、米企業を中心にDEIに関する取り組みの見直しが報道されることもあります。

山口:グローバル視点で見れば、法整備も含めて、日本のDEI推進はまだ発展途上であり、そもそものシチュエーション自体が異なると私は考えています。先ほど五十嵐さんが述べたように、労働力も他国と比較して減少傾向にあり、世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート 2025」では、日本は148ヵ国中118位に位置し、G7(主要先進7ヵ国)の中で最下位にとどまっています。「アクションが行きすぎだ」と指摘されているアメリカに対し、日本はその前のファーストステップにまず注力すべき段階なのではないでしょうか。

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パナソニック コネクト 取締役 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント 山口有希子
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パナソニック コネクト 取締役 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント 山口有希子
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五十嵐:米企業のDEI目標を撤回・縮小する動きをまとめて「撤退」と報道されることもありますが、より現実的かつ効果的な取り組みへの「刷新」を進めているという方が的確だと私は考えています。報道に上がっているような企業の中でも、既存のプログラムをより現実的かつ効果的な施策に変更したり、DEI推進のあり方を見直したり、足元を固めるような形で、継続してDEIに関する取り組みを行っている企業が多くあります。

保守系シンクタンクに向けた声明の発表や、継続方針を明示するなど政府からの「逆風」に抗うさまざまな動きもありますし、米企業のLGBTQ+に関する取り組みを評価する「企業平等指数」の2025年版では、新たに72社が調査に参加し、100点を獲得した企業は765社で、昨年から3割増加しています。

何より、いち当事者として、切実にもっと個人個人が生きやすい社会であってほしいと思います。誰もがキャリアプランを諦めることなく、働きがいを感じ、尊重される社会をめざすことに決して間違いはないと思います。また、国内で多様な人材の受け皿をつくることは、日本自体の成長にもつながるのではないでしょうか。

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企業起点・個人起点の相互作用が、社会を変える力に

パナソニック コネクトがDEI推進を含むカルチャー&マインド改革を始めてから、8年ほど経ちます。現状の成果を実感しますか?

山口:取り組み当初を振り返ると、隔世の感があります。女性管理職比率は2017年当時、お恥ずかしながら2%だったのですが、今は8.5%まで上昇して男性の育休取得率も100%に。企業カルチャーも、「育休を取ったら同僚に迷惑をかけるのでは」と遠慮し合うのではなく、「子どもが産まれるんだ! 育休はいつ取るの?」と自然に聞くことができる雰囲気に変わりました。ビジネスのポートフォリオの変革も進めるなかで、昨年度は最高益も記録しています。これはDEI推進が企業の成長に寄与することの証左だと、私は考えています。

社員からは「数年前と比較してまったく違うカルチャーとなり、働きやすくなった」という声が届いていますが、これは社員全員の努力の結果だと思います。

トップダウンのDEI推進で、社内カルチャーが大きく変わってきたと。

山口:あらゆる社員がイキイキと活躍できるカルチャーをつくるには、企業と個人それぞれのアプローチが重要だと考えています。企業起点だからこそできるアプローチに、「啓発活動」と「働く環境の整備」があります。「働く環境の整備」とは、社内規定や採用プロセス、評価基準や報酬体系などの整備ですね。そして、啓発とは、トップの意思表明と社内外に学びやアクションの機会を提供することです。

一方、個人起点でできるアプローチとして、「社員一人ひとりの行動や配慮」が挙げられます。DEI推進についても、虹色のステッカーをパソコンに貼るなど、グッズを活用してALLY(アライ)であることを表明してみたり、自分が分からないことでも否定せずにまずは調べてみたりと、一人からでもできるアクションがたくさんあります。まさに、「Pride Action30」で紹介しているアクションの数々ですね。

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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30日間、一つずつ自身で行動を起こすことを促すPride Aciton30の「アクション・カレンダー」。「『男らしい・女らしい』という言葉を使わないようにしてみる」「『アライ』という言葉を調べてみる」など、誰もが気軽に始めることができるアクションの数々が挙げられている。
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五十嵐:「Pride Action30」のアクション策定にあたっては、ハードルを設けることなく、「できることを見つけ、一緒に行動してみませんか」というメッセージをあらゆる人にどうしたら届けられるか、山口さんとも長く議論を重ねましたね。LGBTQ+に対する理解を深め、支援を示す入り口として、「これならできそう」と思っていただけたら幸いです。

山口:こうした「社員一人ひとりの行動や配慮」を後押しするためにも、企業側が、先ほどお話しした「環境整備」と「啓発」を率先して行う必要があると思っています。そうすることで、会社・個人それぞれの取り組みが相互作用を生み出し、企業カルチャーとして根付いていくんです。そしてそのサイクルが、お客さまや取引先、社員の家族の方々・・・・・・とどんどん広がれば、やがて社会全体にポジティブな影響を与えられるのではないでしょうか。

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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楽しみながら「まずは知る」ことで、初めて見えてくる景色がある

パナソニック コネクトでは、「Pride Action30」や「Tokyo Pride」へのレインボースポンサーとしての協賛のほかにも、LGBTQ+の企業横断勉強会「レインボービジネスネットワーク」の運営や企業横断型「クロスメンタリング」の実施など、社外と連携するDEI推進の取り組みも多く行っていますね。(参考:パナソニック コネクトのDEIの取り組み

山口:DEIを推進する企業として、もっと当事者の方々に寄り添えないかと考えてきた結果です。私たちパナソニック コネクトだけでなく、DEIを推進する各社が持つソリューションやリソース、そして貴重な知見を共有し、手を取り合って声を上げていくことができれば、きっと世の中を変える大きなきっかけになるはずなんです。

五十嵐:「Pride Action30」も第1回目は20の企業、団体が連携して行いましたが、2回目となる今年は65社に増え、その輪が着実に広がっています。近年は、企業の方からLGBTQ+の取り組みについてご相談をいただくことも増えてきており、国内企業のLGBTQ+への関心・問題意識はこれまで以上に高まっていると感じています。企業との連携を通じて、私たちのような民間団体だけではリーチできていなかった方々にもメッセージを届けられることが、非常にうれしいです。

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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企業との連携で、五十嵐さんが印象的な事例はありますか?

五十嵐:本当に数えきれないほどあるのですが、一例としてご紹介したいのが、明治社内のアライネットワーク「Marble」メンバーの提案で生まれた「マーブルパウチ ダイバーシティパッケージ」です。「バレンタインデーに多様な方の気持ちに寄り添う商品を作りたい」という明治さんの思いがきっかけとなり、ダイバーシティデザイン商品の開発が決定、私たちプライドハウス東京も協働させていただきました。(参考:マーブルパウチ ダイバーシティパッケージ|株式会社 明治

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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マーブルパウチ ダイバーシティパッケージのデザイン
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商品が実際にコンビニなどの店頭に並んでいるのを見たときは、感動しました。私たちだけの力では成し得ず、企業との連携があって初めて実現できたことです。当事者としても、やっぱりそういう配慮や思いが伝わるデザインの商品を見ると「あ、見ていてくれているんだな」と安心するんですよ。まさに企業が当事者の方々に寄り添ってくださった好例だと思います。

最後に、インクルーシブな職場、社会のために企業ができるファーストステップはなんだとお考えでしょうか?

山口:まずは、思いのある方の意思表明ですね。そこから、改革につながる土壌ができると思います。「意思はあるが、何をすればいいかわからない」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、私も他社のいろいろな取り組みからたくさん学んでいます。そうしたものも参考にしながら、「こんな取り組みがあれば、当事者の方がもっと安心して働けるんじゃないか?」「こんな風に職場を変えたい」とご自身の意見を発信し、仲間をつくっていくことで、少しずつ世界が変わっていくと思います。

五十嵐:私は「無関心層へのアプローチ」が重要と考えています。「自分のまわりにはLGBTQ+の人はいないから関係がない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「まわりにいない」のは、当事者の方々が安心してカミングアウトできていないから、という可能性もあります。LGBTQ+や、自身がLGBTQ+かもしれないとお思いの方々も安心できる職場環境づくりのために、「Pride Action30」のアクションの提案から始めてみるといいかもしれません。実際、「Pride Action30」の内容をラーニングコンテンツとして使いたいというお声もすでにいただいています。

山口:今の五十嵐さんのお話を聞いて、思い出したエピソードがあります。あるカフェでPCを開いて仕事をしていたら、見知らぬ方に「PCに貼ってあるALLYのシール、すごくうれしいです」と声をかけられたんです。

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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その方はその日、同性のパートナーと朝食に来ていたそうなのですが、つい声をかけたくなったと話してくれました。ALLYのシールを貼っているだけで、少しでも当事者の方の気持ちにポジティブな影響を与えることができたのなら、こんなうれしいことはありません。

五十嵐:聞いている私まで、そのエピソードを聞いてうれしくなりました。山口さんのALLYのシールを見て「うれしい」と思っても声をかけなかった方も、きっといらっしゃるはずです。声をかけてきた方がもし当事者だとしたら、声をかけることによってカミングアウトと受け取られる可能性があることですし、勇気が必要ですから。

今の日本企業をリードする経営層の方も多くいらっしゃる、私たち50〜60代は、LGBTQ+について学校で学ぶ機会がほぼなかった世代でもあります。気づかなければ取り組みにつながらないのは当然ですし、知らないことを責める必要はありませんが、知識のアップデートは求められていると思います。まずは、「知る」ということがDEI推進の最初の大きな一歩につながると思います。

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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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取材当日の6月11日には、「Pride Action30」の有償枠参画企業のDEI担当者が集まり、ワークショップも開催。LGBTQ+をとりまく直近の動向や課題感を共有しながら、LGBTQ+理解促進のアイデアや各社のプライドマンスの活動についても、ワークショップ形式で話し合いました。

<プライド月間レポート・後編>「Pride Action30」で広がるALLYの輪|パナソニック コネクト

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企業ゆえのDEI推進のポイントとは? プライドハウス東京の五十嵐代表理事とパナソニック コネクトの山口取締役に語ってもらいました。
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「企業」だからできるアプローチがある。プライドハウス東京と考える、DEI推進のファーストステップとは?
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取材・文:島田 ゆかり、写真:池村 隆司